一応挨拶してな、と言われて

面倒だと思った。

なんで、友達をわざわざ拾うんだ、と思った。



彼氏とまだ付き合いそうで付き合っていなかった時、

2人で泳ぎに行った。

そこに入ってこようとした彼氏の友達。

少しでも、彼氏とのキョリを詰めたかったあたしにとっては、

敵以外のなんでもなかった。

結局、その人はするべく遠慮をしたらしく、

ついてはこなかった。

あたし達2人のジャマになるから、と。

当たり前だよ、

あたしは、内心そう思った。

でも、泳ぎに行った後、

彼氏は、その友達を含む昔からの友達大勢と飲むことになっていた。

それでだった。

駅で待つ、その人を車で拾って、

そのまま飲みに行こうということ。

その人を後部座席に乗っけたまま、

あたしを家まで送って行こうということ。

だから、車に乗っけた時に、助手席に乗ってるあたしには、その人に対して、

一応挨拶をしろ、と。

その人は、元気よく後部座席に乗ってきて、

彼氏と久しぶりだのなんだの話すと、

挨拶をしたあたしに少し興味を持って、

話しかけた。

容姿のわりには、ぬけた人だと思った。

黙っていれば、結構かっこいいのに、どこか抜けた人だと思った。

その人懐っこい笑顔は、彼氏にはないものだった。

車があたしの家について、

なんで仲間はずれにするのょ、

と内心恨めしそうに車の外から手を振るあたしに

その人は、「バイバーイ。」

とその人懐っこい顔で手を振り笑って言った。



彼氏と付き合い始めて、ディズニーシーに行った。

ギョウザドッグを買うのにさんざん並んで、

やっと近くに座って、それを食べていると、

彼氏の名前を呼ぶ声がした。

現われたのは、その人。

その人は、仕事の都合上、東京に住んでいた。

それにしてもすごい偶然。

あたしの顔を見るなり、

「あの時のコやんなぁ?!」

とニヤニヤした。

勢いで話す感じ、面白くて思わず笑った。

話を聞かない。

変な人だと思った。



その人こそがコウジくん。

バーベキューの日、後半、ダウンしかけのあたしを見て、

「しんどいの?」

と心配そうに顔をしかめて言った。

泳いで濡れた茶色い髪をバサバサ拭いて、

またあたしを見た。

答えは、遮るように彼氏が返してしまった。

もうあたしに棲み付いてしまって、出て行ってくれない。

それは夏のせいだと思いたい。

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