《つづき》

こっちにこないかなぁ。

なんてゆう人なんだろう。

酔ったのかな、目が離せない。

向かい側に座ってる若い社員さんや、

まわりの友達の話にもうわのそら。

あたしは、愛想笑いだけをして

その人をちらちら目で追っていた。

そしてその人は、あたしの望みどおり、

本当にこっちに向かってきた。

来た!来た!!!

ほんとに来ちゃった!!!

あたしの向かい側に座っている

若い男の社員さんの隣にお酒を片手に座った。

「なんかもう喋る人いねーっす。」

ドキドキしてよけいにアルコールがまわる気がする。

彼は、急に向かい側にいるあたしにちらりと目をやって、

あたしに話しかけてきた。

彼はあの時、あたしにいくつか差し障りのない質問をしたと思う。

話すうちに同じ大学の先輩後輩だということがわかって

話がはずんだ。

酔っているせいで、笑い上戸になっていたせいもあるかもしれないけど

とにかく、あたしは、彼の特異な雰囲気に飲まれた。

いつのまにか彼はあたしの横に座っていた。

「彼氏いんの?」

ちらりと横目であたしを見る。

聞かれるだろうとは思ってたけど、

とっさの答えに困った。

確かに彼氏はいた。

指輪もしていた。

でも、正直に答えたくないと思ってしまった。

指輪を隠して「いない」と言おうか迷った。

あたしは、すっかりおかしくなっていた。

「あ〜・・・・っとねぇ・・・・。

うん、いる・・・。」

どんな顔をするのかと思ったら

「なんや、おもんない!!」

そっぽを向くしぐさをした。

それからまた違うことを話した。

お互い酔っていたし、変に笑うところもノリも合っていたから

ほとんどふざけていて、内容はなかったけれど。

途中で急に彼が言う。

「え?ほんっまに彼氏いんの?」。

「彼氏いんの?」。

しつこいー・・・。

ふざけてるのはわかってたから

ちょっとノってやろうと思って答えた。

「あー。じゃぁ←?もう・・・いません!」

そしたら彼は、すぐに、「じゃあ付き合おう。」

はぃ?

「じゃんけんしよう。負けたら付き合って。」

その後、「付き合おう」を連呼。

えー。えー。

何この人???

・・・あ。

わかった。

こいつ。

いいかげんなヤツね。

いや、わかってたけど。

言ってることむちゃくちゃだ。

なに、この人。

あ。

ないな。

この人。

こんなヤツいや。

なのになのに

次の日あたしは、名前しか聞いてなかった

その人をもっと知りたいがために

気付いたら

その人の職場に向かっていたなんて。

なんてこった。


                    つづく。。。。

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